会長挨拶 

中村正彦

(北里大学薬学部病態解析学)

 

第50回総会・学術集会開催にあたって

“Sophia kai Ergon”
 
 ご存知のように、本年7月23日に、埼玉県熊谷市で41.1℃の日本歴代最高気温が記録されました。欧米では蒸し暑い夏はEpon樹脂包埋に適しない気候のため関連した実験はやらない研究室が多いと聞いたことがありますが、最近の日本の気候では樹脂の重合は数ヶ月も無理ではないかとさえ思われ、日本臨床電子顕微鏡学会から日本臨床分子形態学会への移行は気候変動を見越した大変な達見だったのかと、火照った頭で考えておりました。
さて、このたび日本臨床分子形態学会の映えある第50回総会・学術集会を開催させていただくことになり、理事長をはじめ関係各位に心より感謝申しあげます。北里大学としては、はじめての主催であり、また母校の慶應義塾大学としては第14回(1982年)を病理学教室の坂口 弘先生が旧日本都市センターで開催されて以来、36年ぶり2回目となります。大学院生の時、慶應病院の別館にあった Hitachi HS9電子顕微鏡を坂口教授、坂本先生、教室の織田正也先生、宗像良雄先生の指導の元、使わせていただいたのを昨日のように思い出します。
 第50回の本学会は2018年9月7日(金)と8日(土)の2日間、北里大学の本部があります港区白金で開催いたします。メイン会場は、薬学部コンベンションホールから改称しました北里大学大村記念ホールで、薬学部の教室も使い開催させていただくことになりました。
 本会のメインテーマは、学祖の北里柴三郎博士の言葉であり、大学のモットーである“Sophia kai Ergon 叡智と実践“としました。このギリシャ語の言葉の由来はソクラテスからともいわれ、その言葉のなかに「人間の美徳はすべてその実践と経験によっておのずと増え、強まるのである 」という名言があり、北里博士の「学者の知識はどんなに革新的で高尚なものであっても、それが一般社会に還元されなければ何の役にもたたない」という持論と一致したのではないかと、考えておりますが、果たして正確な理解かどうかはわかりません。いずれにしても、本会のさまざまな領域の研究者が一堂に集い、共通する真理をもとめて、討議するという主旨と合致することから、テーマに選ばせていただきました。
 今回は第50回にあたることから、理事長、副理事長とご相談し大先輩の谷川久一先生、畑俊夫先生、円山英昭先生による鼎談を企画しております。特別講演は、4名の方にお願いしております。まず、広い視野を持つことの重要性の観点から、読売新聞医療部 館林牧子さんに「平成年間の医療記事の移り変わり」と題する講演をお願いしております。また、形態学とともに新たな視点としての重要性ということから、エピゲノムの権威の慶應義塾大学医学部病理学教室の金井弥栄先生に「病理組織検体のオミックス解析に見るがんの多様性」をお話いただく予定です。また、大村智栄誉教授の流れを汲む供田 洋先生には、「動物細胞内中性脂質蓄積を指標とした新規創薬素材の探索」についてお話し頂き、薬学の深淵に迫っていただきます。また、ご専門の微生物学に加え、北里柴三郎記念館においてその生涯を研究され、故郷の小国町から熊本まで徒歩で辿られたご経験を持つ檀原宏文先生に、その旅を経て得られた北里柴三郎論をお願いしました。
 シンポジウムとしては、ゲノムと肝臓の二つを取り上げました。それぞれ、さまざまな観点からの演題が発表されます。ワークショップは、病理および婦人科領域のテーマを取り上げました。4つともプログラム委員の先生がたのご尽力により面白い演題が集まっており、議論が盛り上がるのではと期待しております。
 新基軸として、 Help me cornerをもうけました。若い先生がたの研究の発展を手助けできればという考えで、長期構想委員会から提案されたものであり、どういう質問があつまるのかに注目しております。
 学会の活性度は、一般演題を担当される若い先生方の活気のある発表がどのくらいあるかに大きく依存していると思います。そこで今回は、僭越乍全て口頭発表とさせていただきました。優秀演題賞選定の対象ともなりますので、宜しくお願い申し上げます。
 また、学会の合間にお時間がありましたら、新装なりました北里柴三郎記念館を通常より延長し、夜 6時半まで開けていただいておりますので、歴史的な展示をご覧くださればと思います。
 副会長の寺田総一郎先生、事務局長の横森弘昭先生、プログラム委員長の東俊文先生と十数回集まっていろいろ企画を練りました。二日間の会期を通して、なにか皆様方の今後のさらなる発展の一助になる点があればと期待しております。
 みなさまのご参加をこころよりお待ち申し上げております。
平成30年8月吉日
 
第50回日本臨床分子形態学会総会・学術集会会長
北里大学薬学部臨床薬学研究・教育センター病態解析学准教授
中村正彦